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COLUMN築44年。配管からの漏水事故が頻発しているマンションのご相談事例
ある日、排水管からの漏水事故が多発しているマンションの管理組合様から、相談が舞い込んできました。築40年以上のマンションは、まるで将来的な配管の取り替えを見越していないような設計になっていることが多く、居住しながらの改修工事は現実的に難しい場合がございます。
まずは、現在のマンションの状況などを確認するため、管理組合様と面談することにいたしました。今回は、漏水事故が頻発している雑排水管の修繕工事を検討されているとのことでした。マンションにはその用途に応じて数種類の配管が使用されております。現在では、塩ビ製やポリエチレン製などの樹脂配管が広く使用されております。
しかし古い年代のマンションでは、例えばお水の配管はライニング鋼管というものが使用されております。この配管は鉄でできてありますが、通水される配管の内側に塗装がされており配管を錆などの腐食から守り長期的に使用できるよう設計されております。しかし経年劣化により塗装が剥がれ配管自体に錆がでてしまいます。今回の工事対象である雑排水管も鉄でできている配管ですが、常に通水され水圧が掛る配管ではないため、内側に塗装などは施されていない配管です。
現場は50世帯前後のマンションで、部屋の間取りはA~Eの5種類ありました。そのうちの1種類のお部屋だけ配管の交換工事を実施する上で、重大な障壁があることが判明しました。
マンションの隠れた問題。お風呂の壁の中に問題のある配管が…。
マンションの大切なライフラインである配管について説明する上で、一つのポイントとなるので縦配管と横引き配管というものです。
縦配管は読んで字のごとくマンションを1階から最上階まで、縦に貫通している配管のことで給水または排水を縦方向に流している配管のことです。次に横引き配管ですが、前述の縦管から横方向に枝分かれして、各部屋の蛇口まで水を運んでいる配管です。縦配管が共用部分で横引き配管は専有部分の持ち物になります。一般的なマンションでは、この縦配管はマンションの外廊下の玄関扉横にある鉄扉の中などに収納されております。ここに縦配管があれば鉄扉内部のスペースにもよりますが配管の取り替え作業もスムーズに行うことができます。しかし今回のマンションでは縦管がお部屋の中にあることが分かりました。またあろうことかお風呂の壁の中に収納されており、その取替作業を行うにはお風呂の壁を壊さなければなりませんでした。
条件が良ければ、現在の縦配管を使用中止して、新しい縦配管を建物外壁や共用廊下などに作ってしまうことも可能です。これができればお風呂を壊す必要もなく、グッと難易度も下がりますが、検討の結果この方法は不可能であるとの結論となりました。
このマンションにとっての最善の改修方法とは何か?
今回の事例にて配管取替工事を実行する上で問題となる事象は次の通りです。
- ・お風呂の壁を壊し配管の交換をするのは、概ね2週間程度は要するがその間は該当室のお風呂が使用不可となる。
- ・すでに居住者が自費でお風呂の交換を実施しているが、解体したお風呂の復旧費用が管理組合で持つべきか。
今回のケースでは結論からお話ししますと、お風呂の壁の中に配管があるお部屋は現在居住中のお部屋で3部屋あり、工事期間中は近隣のマンスリーマンションに仮住まいしていただき、不在時に工事をすることになりました。またお風呂の交換費用は現在と同等仕様で管理組合様の費用負担ということとしました。
この結論に至るまでに、様々な議論があったことはお察しいただけるかと思います。
一番争点となったのは、この数部屋の工事のために他の部屋とは比較にならない費用が発生してしまい不公平ではないのかということです。
しかしこの問題を放置すれば、工事が中途半端になってしまうばかりか、水漏れによりマンションの共有財産であるコンクリートの構造体を痛めてしまう原因となり、資産価値が低下してしまいます。また漏水事故が発生した場合は基本的には階下のお部屋など、被災してしまった内装や家財などの復旧費用は、マンションの保険が適用される案件でもありますが、あまりにもその様な事故が頻発するようであれば、定額の保険料が値上がりとなる可能性もあり、様々な要因でマイナスになってしまいます。
最終的には、この問題をマンション全体の問題として考えていただき、上記のような決断を管理組合様にしていただき、無事工事を開始することができました。
改修工事は居住しているところ行うので、新築工事とはまた違った制約が発生する場合がございます。その解消・解決には、我々施工業者だけでなく、お客様の協力が不可欠であると思い知らされた案件でございました。