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COLUMNマンション大規模修繕に談合はあるのか?
マンション大規模修繕工事における談合やバックマージンなどの不適切な問題は、たびたびメディアでも取り上げられ社会問題となっております。ついには国が動き始める事態にまで発展し、国土交通省による業界団体への通達や公正取引委員会による立ち入り検査が入るまでになっております。手前味噌で恐縮ではございますが、当社の受注プロセスにおいては談合とは一切の関わりを持っておりません。ですので談合が行われている場面を実際に目にしたことはないのですが、建設業界に従事していると実例を耳にすることがございますし、少しインターネットで検索しただけでも同様の経験談を見つけることが出来ます。ここでは談合の問題点などを解説していきたいと思います。

談合の問題点とは?
談合とは市場経済で当たり前に行われている健全な自由競争を放棄し会社間で価格を取り決めた上で受注する会社を決定してしまうことです。市場経済は自由競争が行われることで対応出来ない企業が淘汰されていき発注者と受注者の双方に利益がある適切な価格に落ち着くとされていますので、これが人為的に操作されてしまうと価格が高止まりし、購買側が不利益を被ってしまうとされております。
なぜ談合が行われてしまうのか?
談合はある程度業界が成熟していくとそれを守ろうとする力が働き、その結果として行われてしまうのだと思います。マンションの大規模修繕工事を行うには建設技術者の確保が不可欠です。それに加え自社専属の職人を囲っていくためには安定した受注高が必要となってきます。そういった状況で防衛本能が働いた結果、企業は談合へと手を染めてしまうのです。また建設事業者は得意とする工事によってカテゴライズされており、内装工事を専門としている会社は外部工事の実績はあまり多くない傾向があり、戸建て住宅専門の塗装会社はマンションの大規模修繕を不得意としています。新築工事を主力としているゼネコンなどではマンションの大規模修繕工事を請け負うことはほとんどございません。そうなりますとマンション大規模修繕工事を行う会社は意外なほど少なく、カルテルを組みやすい状況になっていると言えます。また官公庁の入札案件における談合では、事前に発注サイドで落札予定価格を決めた上で参加企業に価格を提示させ最安値の企業が落札するという形で進められますが、近年では官公庁が想定しているよりも工事価格が上昇しているため官公庁が定めた落札予定価格を上回る金額で企業側が入札することになります。そうなると落札業者が決まらず業務が滞ってしまうので、事前に落札予定価格を発注側が受注側に漏らしてしまうことがあるようです。その過程で贈収賄が行われてしまうことになれば工事価格とは関係のない経費が発生し、最終的には一般消費者が被害を被ることになります。
大規模修繕工事で行われる談合とは?
管理会社や設計コンサルタントが主導する談合が事例としてございます。表向きは公募としておいて応募企業の審査に厳格な基準を設け事実上新規参入業者を排除した上で、予め決めてあった業者を見積合わせに参加させます。その中から落札業者を決めその他の業者には見積書の金額を指定して作成させて落札業者を決定してしまう手法です。また設計コンサルタントが主導してない場合も参加業者間でカルテルを組み価格調整をしている場合もあるようです。新規参入業者を排除する建設業界の体質は過去には国際問題にまで発展した事例もございます。1980年代に起こった日米建設摩擦では、米国企業が日本の公共工事への参入障壁として日本独特の商慣習や談合体質が妨げになっていると指摘し、政府間協議にまで発展しました。談合を進めている企業側の言い分としては、マンション修繕には厳格な施工管理と高レベルの施工品質を求められる。それを市場経済の原理に任せてしまうと施工単価が下がりその高いレベルを維持出来なくなってしまうため必要悪であるというところだと思います。例に挙げた日米間の事例も自国産業を守るという大義名分があったのだと思いますし、官公庁の発注担当者も施工力が十分でない業者に落札され問題がおこれば責任問題になってしまうとの思いがあったのだと推察できます。たしかに従業員数人の工務店に市役所の建て替え工事を依頼することは出来ません。しかし工務店側もマンパワーや資金力が不十分なことは分かり切っているので、無謀な案件には手を挙げることはしないと思います。とはいえ工事途中で倒産されてしまったり安価に発注した工事内容が不十分であれば混乱に陥ってしまうので、ある一定の審査は必要です。企業が提供する商品がある一定のレベルに達すれば、それを生産するためのノウハウが必要不可欠になりますので、新規参入することは容易ではありません。しかし開かれた自由主義経済圏の中では、ブラックボックスの中で消費者の選択肢を過度に狭めていることは健全とは言えないのではないでしょうか。
談合が行われた場合の工事自体は問題ないのか?
談合を行ったこと自体が工事品質に影響を及ぼすことは少ないと思います。設計コンサルタントが入る事で第三者の視点から工事をチェックすることが出来るため、品質の低下を防止する機能は働いていると思います。しかし良い商品をより安くが市場原理だとすれば、それが歪められた談合では適正な価格で発注されていない恐れがございます。管理組合様はもちろんですが、ひいては各区分所有者様にとっても不利益となっている可能性がございます。
談合を防ぐためにはどうすればいいのか?
業者選定を第三者に任せるのではなく、管理組合様が主体となり信用に値する工事業者に依頼することで、ある程度の談合は防ぐことが出来ると思います。しかし個人的に懇意にしている業者を取り立てることで癒着しているのではないかと有らぬ疑いを持たれてしまうと心配される方もいらっしゃるのではないかと思います。また依頼した業者の間でカルテルが組まれているかどうかを見極めることは困難であり万全とは言えません。コンサルタントを依頼することは施工業者の手抜き工事を防止することと第三者の専門家目線でのチェック機能を働かせ施工品質を向上させることに目的があると思いますが、ここが談合の温床になってしまっていることはデメリットとなっております。これを防止する意味で大規模修繕瑕疵担保保険を利用することがございます。瑕疵担保保険証券を保険会社が発行する際の条件として、施工書類のチェックや現場確認がありますので保険会社による第三者目線でのチェック機能を働かせることが期待出来ます。ある管理組合様から受けた相談の中に独自にある会社に見積依頼したが、「〇〇会社さんの物件なので見積を出せません」と見積自体を断られてしまったとのことで、業界に蔓延る力関係が談合を続けていくための助力となっている面もあるため、その是正は容易ではありません。マンションはその関連業者の物ではなく、それをご購入された区分所有者様の大切な財産です。談合を防ぐことにより適正価格で工事を発注することが出来るため、その差額を他の工事予算に振り分けれることが出来ますし、それは月々の修繕積立金の徴収額にも影響します。実際に高価格の大規模修繕を実施してきたことで、玄関扉の交換に予算を回すことが出来ず、玄関扉を共用部から専有部に規約を変更し区分所有者負担にするといった弊害も出てきているようです。談合を防止するために管理組合様が独自で業者選定や工事監理に主体的に取り組むこととなれば、やはりそれなりの労力はかかってしまいます。しかしそれをすることでご自分の資産に対する理解も深められると思いますので、マンション所有者様におかれましては、日々情報収集をしていって頂きたいと願っております。