長期修繕計画がない！

築43年。自主管理のマンション管理組合様よりご相談

当社の内装リフォーム部門より、施工中の分譲マンションの理事長様より建物外部の修繕についてご相談があるとのことで、紹介を受けました。

そこは当社からほど近く、私自身も何度も前を通ったこともあるなじみ深いマンションでもありました。まずは、マンションの現状をヒアリングするための面談を実施。そのマンションは、理事は1年間の輪番制で、理事長・副理事長・会計の三者体制。分譲当初からこれまで自主管理で運営してこられていたとのことでした。

長期修繕計画が白紙の状態

お話を伺っていくと様々な問題があることが分かりました。一番の問題は、マンションの長期修繕計画が存在していないということ。さらに、修繕履歴も不明瞭な部分がありましたので、資料チェックや建物調査を実施して状況を整理する必要がありました。

次の総会において、マンションの現状報告と長期修繕計画案のプレゼンテーションについての了解をいただき、1回目の面談が終了しました。

あらゆる部分の修繕が同時発生。どこから手をつければよいのか？！

整理の結果、前回の大規模修繕工事からすでに約12年が経過し、次回の大規模修繕工事も直近に実施しなくてはならないことが分かりました。給排水管については、専有部分の床下配管は鋼管からポリエチレン管に全世帯更新済みではあるものの、汚水の縦管やバルコニーを縦に貫通している雑排水管は竣工当初のままであることが判明。居住者様へヒアリングをしたところ、バルコニーの雑排水管からの漏水が各所で発生し、都度修繕対応していることなどをお聞きすることができました。さらに受水槽は現在では珍しいコンクリート製となっており、衛生管理の観点から考えても早期改修が必要でした。

マンションの長期修繕計画は、分譲時から起算して作成することで、徐々に資金が溜まっていき、無理のない修繕計画を作成することができますが、これを築43年目から作成すると、計画の初頭に様々な修繕が重なってしまい、いきなり資金がショートしてしまいます。金融機関からの借り入れということもできますが、それは最後の手段であり事業費に上乗せして金利分を余計に支払うことになるのですから決して良いことではありません。

マンションの修繕で費用が大きく掛るのが、大規模修繕工事、給排水設備改修工事、玄関ドア・窓サッシの交換工事の３つです。これを如何に修繕周期を逸脱しないように配慮しながら、実施時期が重ならないように分散していく作業が必要でありました。また他に改修費用が掛るものと言えば、エレベーターと機械式駐車場です。幸いこちらのマンションには、そういった設備がなく不便ではあるかも知れませんが、資金面ではそれが救いでもありました。

無理なく実施できる修繕計画のご提案

当社からのご提案としてまず、設備改修に関しては、コンクリート製の受水槽を廃止して給水方式を高架水槽方式から直結増圧式に変更し、あわせてパイプスペース内の共用の給水縦管を交換する計画に。汚水配管に関しては、耐久性のある鋳鉄管となっておりこれまでも漏水事故は起きていないことから、交換工事は当面見送ることにしました。そして大規模修繕工事を次年度以降に先延ばし、また、実施時には建物全体に足場がかかるので、その際に直結増圧式への変更で不要になった屋上高架水槽の解体撤去工事と、バルコニーの雑排水管の交換工事を実施することにしました。一部の居住者様からは、まず古い窓サッシを断熱性のある時流のものに交換してほしいとのご要望もありましたが、工事の優先順位を考慮し無理のない資金計画とするために、直近の対応は見送る判断となりました。